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相関性が崩れる場合

Where Correlation Fails

標準的な統計では、投資家が知るべき重要な事実を読み取ることができません

2023年8月

相関係数では、しばしば投資家にとって本当に重要なことが捉えられないことがあります。

私たちのリサーチでは金利水準、金融市場の混乱の度合い、主要株式市場のパフォーマンスなど、状況により相関が時間とともに変動しうることを示しています。総じて、調査結果はリターンが単純な「ランダムウォーク」に従って分布するという考えに疑問を投げかけています。このランダムウォークという極めて重要な前提条件を置かなければ、相関係数に疑念を持ちつつ解釈することになります。これらの問題について、最新レポートで共起性(co-occurrence)という概念について説明し、投資家がポートフォリオを分散化する方法について新たな視点を提供します。

ハイライト:
投資家は70年以上にわたり、「卵を複数のかごに分ける」という考えを実践するために、相関係数に依存してきました。統計学的に言えば、相関係数とは2つの資産間の平均的な連動性の正規化された指標であり、-1から1までの値を取ります。負の相関とは、片方の資産がある方向へ動く時、他方の資産は反対方向へ動く可能性が高いということです。一方、正の相関とは、2つの資産が同じ方向へ動く傾向があることを意味します。しかし、ピアソン相関とも呼ばれるこの指標は、投資家の本当の関心事を捉えているでしょうか。

このレポートでは、答えが「ノー」であることが多いと論じています。これには2つの理由があります。どちらの理由も、リターンが「互いに独立で同一の分布に従う」(IID)という考えに疑問を投げかけるものです。この「IID」という極めて重要な前提条件を置かなければ、相関係数を疑念を持って解釈することになります。

Where Correlation Fails_Chart_JP

1つ目の理由は、ダイバージェンス(乖離)の概念と関係があります。その例をチャートで示しています。投資家はしばしば月次データを用いて相関を測定し、保有期間としては1年、5年または10年を想定しています。これにはそれなりの根拠があります。すなわち、リターンがIIDが前提とする分布から生じるのであれば、これは現実的な想定だと言えます。残念なことに、現実の世界では、この想定が適切でないことがよくあり、これは短い間隔での計測と長い間隔での計測で相関が乖離する可能性があることを示しています。短期的に高い(低い)相関が見られても、長期的に資産が同方向に(反対方向に)動く保証はありません。

2つ目の理由は、分散化についての基本的な誤解に関するものです。実は、投資家は常に分散化を望んでいるわけではありません。確かに、下降局面では、ある資産のパフォーマンスの悪化を埋め合わせるために分散を望みます。しかし、上昇局面では、すべての資産が同時に上昇することを望みます。これは分散化とは逆の志向です。言い換えれば、誰かに盗まれることがないのであれば、卵を一つのかごに入れておくことは投資家にとって便利で、都合がよいのです。

リサーチでは金利水準、金融市場の混乱の度合い、主要な株式市場のパフォーマンスなど、様々な状況により、相関が時間とともに変動する可能性があることを示しています。投資家の望みとは正反対に、上昇局面での分散化と下降局面での一体化によって特徴付けられることもしばしばです。

では、投資家はどうすべきでしょうか? レポートでは、投資家の本当の関心事、すなわち資産が投資期間中に連動して動くか否かに対応する共起性という概念について説明します。共起性は相関の基本単位であり、その相関に対する関係は、一期間のリターン測定値と標準偏差の関係と同じようなものです。そして、上記の課題を考慮し、投資家が真に望む分散化を実現すべく設計されたポートフォリオを構築する手段として、フルスケールでの最適化について説明します。

 

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